「あなたが帰ってきてくれて私は嬉しい」
何度も何度もそのように歌い上げるこのファド。
女性も男性もリスボンでは、この歌をファド酒場で歌い、聞くことも多いけれど、最近聞いた中では私は、このジゼラジョアオンの歌唱が一番好きだ。
いかがでしょうか?
この声。
本当にそうそう出せるものではないです。
低音の響きが女性離れしているかと思えば、
高音もガンガンと低音のような音圧でぐいっと押し切ります。
この低音も高音も圧が変わらないくらいの地声が
ファドの特徴。
歌詞の訳し方は本当に難しいのですが、
この戻ってきた相手は、決して自分にとって幸せな人間ではなかった様子です。
ただそれでも、私はどうしても歌うために一人ではいられなかったのだと、
あなたが帰ってきたからこんなにうれしく
あなたがいなくなった真実よりもあなたがいる嘘のほうがよいと。
そして最後に
私は人生を知りたいだけなのだと、
けれど人生をしったならあなたが隣で眠るとき
知りえた人生を外で眠らせると。
激しい愛の情念とともに
愛する相手を許し、嘘であってもそばにいることを選ぶ。
私の解釈はそうです。
しかし
主人公にとって偽りでも本当の幸せではなくても
その相手がそばにいる、それこそが私の歌いたいという
ファドに通じる道だと歌うのです。
究極でいうところ、
彼女にとっては一番大切なものは
「ファドであるということ」に、結果なりますね。
ファディスタ。
ジゼラジョアオン、恐ろしいほどの解釈を
ぶつけてきます。
大好きなファドです。
私もそのうち歌えるようになれるかな。
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